伊那市長谷の放散虫化石

去年(2012年),放散虫化石が領家帯の黒雲母点紋片岩に見出された.
その後の調査で,低変成度の変成岩には放散虫化石が一般的に残存していることが判明した.
放散虫化石は岩石表面をルーペで観察すれば容易に識別できる.

今まで,放散虫化石は黒雲母が大量に晶出し始める付近で消滅すると思い込んでいた.
これは誤りであった.
放散虫化石が変成岩からほとんど報告されていない理由は,化石が消滅したのではなく,
再結晶作用をうけた化石が化学的処置によってうまく取り出せないためであろう.

伊那市の鹿塩マイロナイトからも放散虫化石が見出されている.
泥質マイロナイトの原岩は領家片麻岩と信じられているので,この発見はかなり重要である.

伊那市長谷の三峰川沿いの鹿塩マイロナイトに見出された放散虫化石については,
以前の記事の追記に記載されている.
しかし,この追記を知らない読者は少なくないと思われるので,ここに掲載しておく.

次の写真にはリング状の小物体が集合しているが,それらは放散虫化石と推定される.
泥質マイロナイトの採集地点は,神田橋の少し北にある美和湖左岸の沢の入り口.林道の屈曲地点あたり.
岩石標本をダイヤモンド カッターで切断し,その断面をUSBマイクロスコープで撮影.

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多数の楕円形組織が集合していて,まるでブドウの房のように見える.

次の画像はダイヤモンド カッターで切断した岩石(変成凝灰岩)の切断面をUSBマイクロスコープで見たもの.
スケールとして方眼紙が写っている.岩石の採集地は伊那市長谷中尾の三峰川沿いの露頭.

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上の写真の岩石の薄片を光学顕微鏡で見ると,
断面がリング状を呈する組織(放散虫化石)が多数認められる(次の写真).スケールは100マイクロメーター.
それらは白雲母や黒雲母に切断されており,変成作用以前の古い組織である.
大きさや量などからみて,放散虫化石だと考えられる.

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今までの経験によると,
層理面にほば平行な面を観察した場合に,放散虫化石を認識しやすくなる.
そこで,その種の岩石薄片を作成してみた(次の写真).スケールは100マイクロメーター.

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遠方や斜め横から眺めると,リング状組織を確認しやすくなるかも・・・.

諺にもいろいろある.
見れども見えず
見たくないものは見えない
聞きたくないものは聞かない

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