跡倉層の放散虫化石

埼玉県の寄居‐小川地域の跡倉ナップには跡倉層がかなり広範囲に分布している.
ナップの南縁部には,跡倉層の砂岩泥岩互層が認められ,泥岩から放散虫化石の産出が報告されている.
実際に,泥岩をルーペでみると,放散虫化石と推測される楕円形のリング状組織が多数認められる.
今までの観察では,放散虫化石と推定される化石は跡倉層の泥岩の大部分に含まれている.

次の写真はusbマイクロスコープで撮影したもので,ほぼ円形の化石が認められる.

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ところが,薄片試料を作製して光学顕微鏡で見てみると,化石は直ぐには認識できない.
よく見ると,茫洋とした円形状のものが確かに存在し,それらが化石なのであろう.
(写真はオープンニコル,スケールは100マイクロメーター)

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径が50マイクロメーターに及ぶような大きな砕屑粒子がかなり多いが,
これらは放散虫化石の認識を妨害している一つの要素である.
なお,放散虫化石の認識のためには,薄片の厚さは普通よりもかなり厚い方がよい.

クロスニコルでは,放散虫化石は楕円形の黒いリングとして認識できる.
(放散虫の外殻は含水非晶質シリカで形成されている.)
放散虫化石の周りには微小な鉱物が点々と取り巻いていて,リング状組織を作っている.

今までの経験では,低変成度の泥質変成岩の放散虫化石は,
ルーペではかなり明瞭でも,薄片の顕微鏡観察で認識することはかなり難しい.
非変成の跡倉層の泥岩ではどうかと,調べてみたが,やはり同じ状況である.

追記
写真の泥岩には大きい砕屑粒子が多い.しかし,泥岩の定義は次のようである.
「泥とは粒径が1/16mmより 細かい砕屑物をいい,それらが大部分を占める岩石が泥岩である.」
1/16mmとは62.5マイクロメーターである.
泥岩に径100マイクロメーターの砕屑粒子が少数存在しても問題ないことになる.
泥岩には一般に粘土鉱物が大量に認められるが,
粘土鉱物が多い岩石には粒径が1/16mmより も大きい砕屑物はほとんど含まれない.
かなり含まれている場合には,砂質泥岩という名称が与えられる.

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