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日本列島には変成岩が広く分布しており,変成岩の研究に都合の良い地域といえる.1950年代には都城秋穂先生のグループによって変成岩の岩石学的研究が精力的に行われ,その研究成果は[変成岩と変成帯](岩波書店,1965)として出版されている. 写真は長野県伊那市高遠町の高遠湖ダム付近を調査中の都城秋穂先生(1966年). 日本では変成岩の地質学的重要性が古くから認識されている. 古生代末期の秋吉造山帯の中核部には飛騨変成帯と三郡変成帯が存在し, 白亜紀の佐川造山帯の中核部には領家変成帯と三波川変成帯が分布している(小林貞一,1941,1951). しかし,小林貞一の時代には変成岩の岩石学的研究は十分ではなく, 想定された変成帯の形成テクトニクスは根拠不十分と言わざるを得ない. 古典的な地質学的研究と新しい変成岩岩石学の研究をふまえて, 都城秋穂先生が1960年前後に提唱した新説が,対になった変成帯という概念である. その概要を説明すると, 変成岩の鉱物の種類や鉱物の組成など(岩石学的特徴)は,変成帯によって大きくことなり,そのため種々のタイプの広域変成作用が識別される.岩石学的特徴は温度や圧力などいろいろのパラメータに依存するが,特に圧力に強く依存する.それ故,圧力を基準にして広域変成作用を系統的に分類することができる. これを都城は次のように書いている. [地球上に見られる変成作用全体の規則性を表すには、エスコラの学説だけでは足りないので、私は変成相系列(あるいは変成作用のタイプ)という新しい学説を提案しました。これは地球上に見られるおもな変成作用を,その圧力に基づいて分類整理する考えでした。] ここで重要なことは,変成作用のタイプが変成帯の存在状況に関連していることである. 日本列島について言えば,白亜紀の佐川造山帯の領家帯は低圧型で三波川帯は高圧型であるが,三波川帯が太平洋側に位置している.古生代末期の秋吉造山帯の変成帯でも高圧型の三郡変成帯は低圧型の飛騨−隠岐帯よりも太平洋側に分布している.この規則性は太平洋に面した世界各地で確認されている. 環太平洋で見られるように,ほぼ同時代に形成された高圧型と低圧型の変成帯が並走している場合, それらを対になった変成帯という. 変成岩が記録している温度・圧力が地球上のどこに実現されるのか,これを考察すると,次の結論が導かれる. すなわち,対になった変成帯は島弧または大陸縁の造山帯を表し, 高圧型の変成帯の生成は海溝の深部における過程に関係している. 変成帯の形成テクトニクスが地球規模のテクトニクと関連づけられたわけである. 変成帯を研究することは造山帯を研究することなのである. なお,多くの課題が未解決のまま残されている.領家帯と三波川帯について言うと (1)領家帯と三波川帯は中央構造線で接しているが,変成岩の形成期には水平方向に100km以上離れていたと 推定される.これを地質学的に具体的に提示すべきである. (2)領家帯と三波川帯の変成岩がほぼ同時期に形成されたことを確定すべきである. (3)変成作用の継続時間はどれほどであったのか. (4)遠く離れて形成した変成岩が現在接合している事実は,当時の火山弧−海溝系の大部分が消滅してしまった ことを意味する.この大規模なテクトニクス(中央構造線の形成テクトニクス)を解明すべきである. これら種々の課題に挑まないと,[対になった変成帯]の質的発展はあり得ない. 問題が解決された場合,地質断面図や古地理図がいくつも完成しているはずである. この種の図が多数掲載されている論文が,戦果を挙げた論文と言うことになる. 対になった変成帯という概念が発表されてから50年になるが,その後の進展が問題になる. 1960年代について,対になった変成帯は白亜紀以前を研究する研究者には悪評だったと思われる. [領家帯と三波川帯が100km以上も離れていた]という古地理に拒絶反応していた. また,古領家古陸と黒瀬川古陸に挟まれている三波川帯について,堆積物の厚さは10km以下と 推定されていたため,三波川変成岩が海溝近傍の高圧下で形成されたという考えは,想定外であった. 1970年代はプレートテクトニクスの時代で,対になった変成帯のテクトニクスはプレートテクトニクスに組み込まれた. 1980年代は付加体の研究が進展した時代である. 1990年代初め頃は,1980年代の成果をもとに日本列島の形成テクトニクスが盛んに論議され, 新説がいくつか発表されている.しかしながら,問題の課題はほとんど検討されていない. 実際には1980年代前半に決定的なデータが提示されているのだが・・・ |
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